Designers Interview

HIROSATO
SAKUMA

DESIGNER

HP
https://linktr.ee/hiro7nine


話者1: 佐久間 啓仁氏
話者2: 取材者
話者3: 当社デザイナー

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取材者:それでは、よろしくお願いいたします。
新年会にお越しいただいて改めて佐久間さんのポートフォリオ送っていただきましたが、弊社の社員みんな、デザイン凄いねって、もっとお願いした方がいいねってなったんですよ。

―― (佐久間氏のポートフォリオを眺めながら会話しています)

佐久間:この作品は賞歴があって、2013年の「APA アワード」という日本広告写真協会というところの、経済産業大臣賞とかあるコンテストで「広告賞」で入選しているんです。どちらかというと、写真の力が大きいとは思うんですけど (笑)。

取材者:写真はお客さんが要望されていたものなんですか?

佐久間:この作品のバンドのアーティストと、この写真のフォトグラファーとが懇意にしていまして、アーティストからこの写真を使いたいというオーダーだけあって、そこからは丸投げという感じで。「これを使っていい感じにして」欲しいと。

取材者:いい感じにして欲しい。ありますよね。

佐久間:あるあるですね (笑)。このアーティストとのお仕事はこれが初めてだったんですけど、この作品をきっかけに所属レーベルからのお仕事を随分ご依頼いただくようになりましたね。

取材者:この仕事でほっとく会社ないですね。

佐久間:こちらはあれですね、2017年に創業したブティックホテルの中にある主力事業の一つのでウェディング事業のパンフレットです。これはなかなか大変でした (笑)。
アートディレクションとデザインを担当したんですが、装丁を着地させるのもハードルが高くて、この紙に辿り着くのが大変でしたね。この間の新年会で印刷所の方も居たじゃないですか。その方ともお話させていただいたんですけど、この紙が本当に大変でした。今までで一番大変でした (笑)。

取材者:何が大変なんですか?

佐久間:この質感!

取材者:探すことが?

佐久間:まさしくそうで、この案件はディレクションから入っていたので、装丁も拘りたいとオーダーが。
実はこれ、カバーの仕様がクラッチバックになっていて、パンフレットを入れるカバーとして使い終わった後、カバー自体をバッグのように使ってもらえるようシッカリした物にしたいということで着地しました。クライアントはエコやリサイクルにとても力を入れている企業なので、そういう二次的な利用もディレクションに盛り込んで提案しました。
そして、そこから紙を探すことになり、たまたま街で見かけたデザイン封筒みたいなものが凄くヌメッとした質感で、クライアントさんがとても気に入って、逆に言うとそれを気に入ってしまったので、他にどんな紙を提出しても縦に首を振れない状態になって (笑)。その紙をどうにか発注しようとしたら、その紙はイタリアから輸入して中国で加工して日本に入ってくるということで、予算には余裕があったので問題ないんですけど、納期に間に合わないと返事が…。
最後は、僕が元々懇意にしていた業界でも職人技で名の知れた印刷会社の方に相談をしたら、アメリカにクオリティーも近くて良い紙があるということで、アメリカから必要ロットだけ輸入して作ったのがこれです。

取材者:この紙触ったことないよ。

佐久間:ちょっとヌメッとした質感が。

取材者:初めて。こんな紙触るの。

当社デザイナー:紙なんですもんね。

佐久間:紙です。

当社デザイナー:吸い付く感じ。

取材者:パンチこれ。

佐久間:そうですね。そういうところも含めてバックに見えるように、という感じで形態とかを試行錯誤して。リサイクルなども意識しているので、使い続けてもらえたら嬉しいですね。

当社デザイナー:絶対捨てられたくないですね。

取材者:そうだよね。

佐久間:そのエンボスもだいぶ苦労して、普通エンボスって1回押しでやるじゃないですか。それで出力してみたら、下の部分のロゴがとても華奢なフォントを使っているから弱く上がってしまうんです。それではクライアントのオーダーに答えきれていないと思って、印刷所に相談して、強弱を変えて2回押しして同じ高さまで上げるという、ハードルの高い注文をしてしまいました (笑)。とても協力的な印刷所さんだったので「こんなオーダー初めてでしたが、おかげで技術が上がりました!」と言って頂けました。本当ご苦労を掛けてしまったので、有難いお言葉すぎましたね (笑)。

取材者:まさにディレクションだね。そういうの。うちのディレクターも結構悩んでますよ、紙選びは。

佐久間:紙が変わると品質がまるで違って見えるじゃないですか。紙を変えるだけで高級になることもありますしね。
UV ってちょっと値段が上がるので、じゃあそれに近い方法でニスを使って、無色のところにニスを引いて相対的な表現をしようという感じにしたり、予算に余裕があれば更に立体感や光沢を出すとか。これはマット PP を引いて、より一層の光沢感を出しているんです。コントラストですよね、光沢とマットの。

取材者:ディレクターとしても指名はありますよね、きっと。ディレクションから佐久間さんにお願いしたいという。

佐久間:していただけると (笑)。
あまり量を持って来れなかったですけど、これは少しお堅いというか企業系のお仕事のパンフレットです。こちらが初版でこちらが改訂版で、ただこちらのパンフレットは、業種のイメージと反して、パンフレットは格好良く見せたいという願望がある会社なので、業種のイメージを考えると少し異例だとは思うんですが。

取材者:インテリアからして格好良く見せたい感出ていますよね。

佐久間:実はこれ、倉庫なんです (笑)。

取材者:え?

当社デザイナー:え?

佐久間:めちゃめちゃおしゃれな倉庫なんです。

取材者::倉庫なんですか?これ。

佐久間:そうなんですよ。
とてもお洒落な内装で、使える写真も格好いいので、デザインするにもやり甲斐がありましたね。長年デザインしていたファッション誌でのデザインや、イタリアのインテリア ブランドのパンフレットのデザインとか、そういった過去のビジュアル寄りの仕事の経験が生きたと思ってます。外資系企業のためクライアントの役員には外国籍の方が多いのですが「洋書の写真集みたい!」とお褒め頂けました (笑)。

取材者:これさ、めっちゃ格好いいよ。こことか見て。

(佐久間氏のポートフォリオを眺めながら興奮しています…)

当社デザイナー:気持ちいいですね。

取材者:色が本当にもう、ここが青で。

当社デザイナー:グラレーションが。

取材者:明るいオレンジ、緑、凄いね。

当社デザイナー:考えて作っているというのが本当に、パシッとはまるデザインですよね。

取材者:佐久間さん、これから3年5年とかでどういうキャリアアップというか、どういう目標でしょう?

佐久間:紙や Web など媒体としては特に強い拘りはないですが、ただ時代の流れもあって、やはり Web や SNS メディアはより増えていくだろうなと思っています。実際、Illustrator や InDesign で紙媒体をデザインするよりも、Photoshop などで Web や SNS のデザインをする機会の方が増えていますしね (今日は紙媒体のポートフォリオ持参だったので、Web 媒体のお仕事を持参していませんが)。
例えば今日見ていただいた経歴の中で、この倉庫の会社は外資企業ではありますが僕が携わってきたクライアントの業種としては、少し異例な感じも周囲の仲間は思うかも知れません。デザイナーのキャリアのスタートはモード系のファッション誌でしたし、そこで長年チーフデザイナーを務めていたこともあってファッション関係のお仕事が多かったり、あとは音楽関係のお仕事が多かったり、いずれもビジュアルを売りの一つにしているようなクライアントさんが多かったりもしているので。
そんな中、倉庫というイメージだけが先行すると “これぞ倉庫!” みたいなパンフレットが作られがちだと思うんですが、少し違う角度からのアプローチすることで多様に表現ができると思うので、僕自身の持ち味であるバランス感やデザイン性を生かして、クライアント自身さえ見えていなかった、新しい一面をデザインにフィードバックできたらなと思っています。
だからこそ、今まで自分と接点の無かったクライアントさんと、こちらを通して繋がって、そして自分のデザインでクライアントさんに喜んでもらえたら、WinWin で最高ですね!

取材者:今日は非常に凄いデザイン見せていただいてありがとうございます。
途中から感動しっぱなしでインタビューっぽくなくなっちゃったんですけど (笑)。