Designers Interview

MIREI
SAKAKI

PHOTOGRAPHER

1983年 北海道札幌市生まれ。
2013年独立。雑誌、広告で活動。

HP
http://mireisakaki.com

Instagram
https://www.instagram.com/mirei_sakaki/


話者1: 榊 水麗氏
話者2: 取材者
話者3: 当社デザイナー

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榊 水麗が手掛けるポートレイトはとても鮮やか。被写体がとても生き生きとしている。

それとは打って変わって彼女のインスタグラムは少しダークだったり、普段気づかない街の風景を表現しており、対照的だ。

カメラマンになった経緯から仕事で写真を撮るときのマインド、オフのときに撮る写真まで、写真を撮ることについて語ってもらった。


写真を辞めようと思ったことは無いですね

取材者:最初にカメラマンという職業に就かれた経緯をお伺いしたいのですが。どんな経緯で?

榊:最初は写真館に勤めていて、それは20歳の時まずアルバイトで入って、それから正社員になって店長になって、それで東京に転勤願いを出して。

取材者:元々東京じゃ無いんでしたっけ?

榊:元々北海道なんです。転勤願いと言っても社員とか全部辞めて、ほぼアルバイトとして来たみたいな。20歳でチェーン店の写真館にアルバイトで入って、東京に来たのは24になる時、夜間の専門学校に2年通って。

取材者:アルバイトしながら。

榊:そうですね。写真館でアルバイトという形で昼間働いて、渋谷の夜間の専門学校に2年、24から26、そこから30で独立するまで専門学校の講師の先生のアシスタントをやりました。

取材者:最初の写真館にいる時とアシスタントの時で何か変わりましたか?

榊:東京に出てきたというのが大きくて、北海道にいる時は、雑誌の世界とか夢の世界で。それをアシスタントの時に目の当たりにしたらこっちやりたいと思いましたね。なので辛いアシスタント生活を乗り越えられたと。

取材者:辛いですか?

榊:辛かったですね。やっぱり。

取材者:時間的に?求められるものが高すぎて?

榊:そうですね、その時のクライアントさんとかお仕事いただく方もいるんですけど、「まさかカメラマンになれると思っていなかった」というくらいダメで、家賃も払っていかないといけないし、撮影がいつ入ってくるかわからないので、写真館の時に着付けとかヘアメイクの勉強をして、結婚式場でヘアメイクとか着付けをやってどうにか生き延びていったという感じです。

取材者:ヘアメイクや着付けを経験して、今もカメラマンをしている理由は何ですか?

榊:写真を辞めようと思ったことは一度もなくて、基本的に土日に撮影入ることは少なくて、ヘアメイクとかは土日にやってはいたんですけど、何でなんだろう。写真を辞めようと思ったことは無いですね。

取材者:ただ好きということですね。

榊:そうですね。

取材者:アイディア捻らないといけない時ってないですか?

榊:結構ありますね。どっちかというとそういうの好きな方です。例えば仕事でも「こういう写真撮ってください」って言われて、でも「こういうのもいいよな」って思うと撮るんです。ボツならボツでいいんですけど、それだけはやめないようにしています。いつかそれが採用される時が来ると信じて、たまに採用されると、「よっしゃ!」みたいな。
 

酔っ払って帰ったりスイッチオフになっていたりすると…ごみ捨て場ずっと撮ってたり(笑)

当社デザイナー:私インスタグラム拝見したんですけど、そっちも凄い好きだなって。ちょっとダークな雰囲気ですよね。

取材者:インスタの写真とかって撮ろうと思って撮るんですか?それともフラフラしながら常にカメラ持って?

榊:最初は撮ろうと思って、いつもカメラ持っていてフラフラしていたんですけど、インスタ始めて毎日3枚ずつくらいアップして段々今日も外に出ないとダメだなというノルマの中でやっています。飲みに行っちゃったりして次の日に2投稿している時も多いですけど。(笑)

取材者:被写体をどう探すんですか?

榊:本当にめちゃめちゃ歩くんです私。10キロとか歩いて見つけたものという感じです。仕事だったらどんな状況でも絶対撮らないといけないというのと逆で、今日はこれしか撮れなかったからいいかというのもアリと思って、その撮高の中であげています。

取材者:10キロはすごい…結構沢山撮るは撮るんですね。

榊:撮るは撮ります。毎日撮っていますね。ほぼほぼ毎日。

取材者:凄いですね。

榊:ただ上手くいったものしか載せない。自分好きなのしか載せていないので。近所プラプラしていること多かったですけど。

当社デザイナー:近所プラプラであれだけ違う場面撮れるというのは凄いですよね。

榊:でも段々ちょっと近所ではネタ尽きてきたので。その時のテンションでああ今日化粧バッチリしているから電車乗ろうかなとか。(笑)あとは撮影終わって、飲みに行くのとかを歩いていこうとかは結構あります。

当社デザイナー:仕事もカメラで、趣味もカメラですか?

榊:そうなんですよね。趣味なし人間といえば趣味なしなんですよね。酔っ払って帰って来る時とかテンション上がって撮っている写真とか、後から見たら結構いいじゃんとなるんですよ。スイッチオフで撮っている感じですね。

取材者:探しているというより、入ってきたものにキンと(アンテナが)立ったら手が動いているみたいな。

榊:そうですね。

取材者:酔っている時の写真は普通の時と変わりますか?

榊:やっぱり基本的にネガティブな性格なので、スイッチオンのときは大丈夫なんですけど、オフにしたら私なんかという感じで、それがああいう写真に出ているんですよ。

取材者:それはダークな感じ?

榊:そうなんですよね。だから酔っ払って帰ったりスイッチオフになっていたりすると…ごみ捨て場ずっと撮ってたり。(笑)

取材者:ごみ捨て場に何かあったんですよね。きっとその時。

榊:多分その時は凄く魅力的に、自分とリンクするみたいな。

取材者:何かの写真賞で、蒲田の自転車置き場凄い汚いんですよね。その蒲田の自転車置き場の写真がどこかの大賞を取ったというので見た記憶あります。確かに凄い画だなと思って、白黒にしていたかな。汚いんだけど、臭いとかが伝わって来る。息遣いとか伝わって来るような写真で、大賞だなと素人でも思ったことはありますね。
ゴミもそういうの。

榊:そこに光とか射していると余計。

取材者:はいはい。

榊:抑揚も凄い激しくて、凄い日の光にはっと思う日もあれば、ゴミばかり撮っている日もある。それが全部あれに出ている。
 

笑顔が引き出せた時の「やった!」という感じが、脳内麻薬みたいになって

取材者:どうやって今仕事取っているんですか?

榊:ほぼ営業行っています。

取材者:それって最初の電話かける時のここに行こうというリストはどうやって。

榊:例えば制作会社、採用系とか。

取材者:うちみたいな制作会社を手当たり次第?

榊:もう電話したりとか。

取材者:凄い。たくましいですね。

榊:私ちょっと変わっているかもしれないですけど。結構営業するの好きで。勿論御社みたいにお話聞いてくれるところって本当に何十分の一の百分の一とかで、9割くらい無視されて、その中でポートフォリオ送ってくださいというところと、いいですよって言ってくれるのは100件電話して1件みたいな感じで。未だにやっています。未だにそうです。

取材者:僕そういう営業したことがあって、3ヶ月間毎日それだったんですけど、僕は無理ですね。あれ続けられるのは尊敬しますよ。凄い。

榊:自分の写真を見ていただけるとか、仕事いただけるなんて、本当に感謝しかないという感じなので。電話すると怒られたりするんですよ。「そんなんいらねんだよ」みたいな。(笑)でもまあ殺されるわけではないしなと思って。

取材者:ポジティブですね。

榊:そうですね。それに関しては鈍感力というのはあるかもしれないと思っています。写真館の時に鍛えられたのかもしれないな、クレーム対応とか。パフォーマンスが大事だなとそこで学びました。

取材者:カメラマンの?

榊:としてのパフォーマンス。写真館は特にですが、その写真を撮ることがイベントだったりするじゃないですか。赤ちゃんとか100日のお祝いで写真撮りにきましたとか、七五三を写真館で撮る人たちが沢山来るので、どんなに赤ちゃんが泣いていても、じゃあどういう風にそのイベントを盛り上げられるのかということは写真館でも凄く学びました。

取材者:僕も(自分の子どもの)七五三を撮ったんですけど、やっぱり撮る人が乗せ上手なんですよね。ぬいぐるみ目の前に持って行って動かして。もう踊っているんです。

榊:あれをやっていました。

取材者:例えば泣いちゃった子はどうやってあやすんですか?

榊:赤ちゃんとかでも、全然泣いちゃって撮れない子供とか、泣いちゃったねっていう顔を私たちがしていると、親にダメなんだって思われるじゃないですか。
なので「泣いていて元気いいね〜!」とか言ってみんなで盛り上げて、「これ凄い可愛くないですか?」って途中の写真とかお母さんとかに見せて、「これ大きくなった時に笑えますよ」って盛り上げて撮ると、その写真が(アルバムで)一番でっかい写真になったりするんですよ。

当社デザイナー:そういうエピソード素敵ですね。

榊:言い方ひとつというのもあるし、それは今の仕事にも生きているような気がします。採用のパンフレットにしても皆さん撮られ慣れてないので、いかに盛り上げて一つの思い出にするか。現場の雰囲気は大事だと思いますね。勿論仕上がりが一番大事ではあるんですけど、雰囲気って結構写真に出るかなと思うので。「楽しそうにやっていたんだな」とか。

当社デザイナー:声かけは大事ですね。

榊:そうですね。現場で一番楽しそうにやっているねとは言われますね。
「なんか楽しそうだったね榊さん」と言われます。

取材者:それが一番撮られやすいですよね。やっぱり撮られ慣れていない人が殆どじゃないですか。緊張しますよね。

榊:しますよ絶対します。そういう人からやっぱり笑顔が引き出せた時の「やった!」という感じが、脳内麻薬みたいになって嬉しくてやっているというのはあるかもしれない。

取材者:面白いね。